小噺│12:16
「こんにちは、ゆうきさん」
「南雲さん、お久しぶりです。今日は珍しく学食なんですね」
「はい。たまにはいいかな、って」
ガヤガヤと騒がしい昼の食堂。
その中で空いていた席に座り、食事をしていた結城に南雲が声を掛けた。
結城はよろしければどうぞ、と自身の前の席を手で指し示す。
その紳士のような対応に、気恥ずかしさを感じながらも示された席へと座した。
「ゆうきさん、実は折り入ってお願いがあるんですが」
席について早々、南雲は結城をじぃ、と見つめる。
その様子に結城はきょとんと眼を瞬き、南雲と視線を合わせた。
そして手にした箸をテーブルの上のトレイに置き、南雲の話に耳を傾ける。
「今度の新聞、学校の七不思議をするんです。
それでゆうきさんに、怖い話の語り部の一人をお願いしたいんですが…」
「ああ、なるほど。おれは構いませんよ」
にこりと爽やかに笑みを浮かべ、了承の意を伝える。
その微笑みに南雲も安心したのか、少し緊張を浮かべた表情を和らげた。
「それなら一体何の話をしましょうか。
おれの部活、結構そういう話が多いんでいくつかストックはあるんですが…」
思い出すかのように空中を仰ぎ、考え込む。
そしてふと辺りを見渡すと、再び南雲へと視線を戻した。
「そういえば、この食堂にもとっておきの話、ありますよ。
南雲さん、美味しいものには目がないしこんな話はどうですか?」
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