小噺│16:03

「それじゃあ怖い話を話せばいいんだな?」
「うん、よろしくね」

屋上のフェンスに背を預けながら、庄司と南雲が話をしていた。
しかしはっきりとしない天気だ。
空は崩れていないものの、雲がかかった空のせいでこの時間にしてはとても暗く感じられた。
二人の顔には影が差し、どことなく表情も暗く見えてしまう。


「佳悠お待たせ。帰ろうか」
「ああ、お疲れさん」
「あづま君こんにちは」
「南雲君か、ひさしぶりだね」

屋上のドアが開き、一人の少年が二人の下へやってきた。
二人と知り合いなのか、にこやかに挨拶を交わし合う。
少年の胸元には、生徒会員の証であるバッチが付けられていた。


「生徒会忙しそうだね」
「まあね。でも俺より先輩たちの方が大変そうだよ。もう少しで引退だから、引継ぎもしなきゃいけないし」
「真琴、いいぞ」

南雲と東が話をしている間、帰る準備をしていた庄司が立ち上がり、帰る旨を伝えた。
それを受けた東が了解、と返事をし、庄司の隣へと足を運ぶ。


「佳悠、ついでにどっかでご飯でも食べない?なんかお腹空いたからさ」
「ああ、いいよ。なに食べる?」
「そうだなぁ…たまにはラーメンもいいかもね。どこか美味しいとこでもあればいいけど」
「それなら、」

にこにこと笑みを浮かべながら、庄司と東を見ていた南雲が口を挟んだ。
二人の視線を受けながら、南雲は操作した自身のスマートフォンを二人に提示し、口を開く。


「中華ならここのお店が美味しいよ。個人的にお勧めなのはあんかけ炒飯だけど、麺類も美味しいし。
二人で二種類頼んで、交換しながら食べればいいんじゃないかな?」
「へえ、さすが有紀。新聞部のグルメ記事担当なだけあるな」
「場所も分かりやすいし、いいね。そこに行ってみようか」

南雲のスマートフォンに映し出された店舗情報を見ながら、二人は頷き合う。
そして店名と住所を聞き、二人は屋上のドアへと足を向けた。


「それじゃあね、南雲君」
「有紀ありがとな、集会について詳しく決まったら連絡してくれ」


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